

2026年5月14日
今回は、制作依頼をして完成した著作物の、
著作権譲渡契約があるものとして考えてみます。
著作権を譲渡しても、実は全ての権利が移るわけではありません。
「著作権」と言っても、実は2種類の捉え方があります。
著作物を自由に複製できる権利等、財産的な面の権利は、
狭義の著作権であり、「著作財産権」と呼ばれることがあります。
一方で、著作者の人格面に着目した「著作者人格権」を合わせたものが、
広義の著作権として考えられています。
著作者人格権には3つの側面があります。
①公表権
②氏名表示権
③同一性保持権
①は、その著作物をそもそも公表するかしないかを決めることができる権利です。
②は、著作物を公表したとして、
そこに氏名を表示するか、するならば実名か変名(ペンネーム)かを、
決めることができる権利です。
③は、著作物を改変されない権利です。
これらは、著作者の人格的利益を守る権利ですので、
著作者という「その人」の個性に着目した権利ということができます。
このような権利のことを「一身専属権」と呼び、
譲渡することができない権利とされています。
上記③にあるように、同一性保持権は、
著作物を改変されない権利であり、これは譲渡することができません。
そこで、制作物の修正、トリミング、二次利用等が問題になります。
また、②の氏名表示権も同様に譲渡できないことから、
例えば制作物に著作者の氏名表示が義務づけられるのか、
という問題も考えられます。
実務では、上記4で挙げたような問題を回避するため、
著作者人格権不行使特約という条項を契約の中に組み込むことが、
しばしば行われます。
ただし、これは強制ではなく契約ですので、
あくまでも発注者と受注者(著作者)の合意に基づくものでなければならないと、
私は考えています。
また、氏名表示権に配慮して、
クレジット表記の有無については、著作者人格権不行使特約がなければ、
契約書の中で明記しておくと、トラブルの回避に役立つと考えられます。
同様に、著作者人格権不行使特約がない契約書の場合は、
改変許諾の有無や利用範囲についても、契約書上で明確にしておくとよいでしょう。
発注した制作物は、著作権を譲渡されたら、
安心して完全に自由に使える性質のものでは実はありません。
譲渡できない著作者人格権への配慮も必要です。